「r>g」
あなたはこの不等式の意味をご存知ですか?
読み方は、「r>g:アール大なりジー」で、「富の格差は広がる一方である」ということを根拠づける式なの。
そうよね。でもこの事実を知っているか、知らないかで大きな差になるわ。
トマ・ピケティ
資本主義経済では「富の格差は広がる一方である」と根拠づけたのは、トマ・ピケティという人物。
彼は、フランスの経済学者で「21世紀の資本」という経済専門書を書いた人なのよ。その専門書は700ページ以上もある難しい本であるにも関わらず、世界で150万部以上のベストセラーとなっているの。
この本の中で主張されているのが
「資本主義の富の不均衡は放置しておいても解決できずに格差は広がる」ということ。
その根拠となっているのが「r>g」なの。
rよりgが大きい?その意味は
そもそも「r」と「g」が何なのか気になるわよね。
「r」:return = 資本収益率(年4〜5%)
「g」:growth = 経済成長率(年1〜2%)
「r」と「g」はそれぞれ上記の意味を示しているの。
資本収益率と経済成長率をわかりやすく言うと、こう言うことよ。
資本収益率:資本への投資によって得られる利益成長率
経済成長率:労働によって得られる賃金上昇率
そしてね、驚くことにピケティさんは18世紀から現代まで、20か国以上の富と貧困に関するデータを収集。調査にかかった年月なんと15年!そして資本主義の富の不均衡が貧富の格差を助長することを実証したの。
「r」の資本収益率が年に4〜5%程度に対して、「g」の経済成長率は1~2%程度しかなかったと指摘。
よって「r>g」という不等式が成り立つと言っているの。
例えば、資本500万円を投資する投資家と、年収500万円の労働者がいるとする。それぞれの利益成長率と賃金上昇率を1年後、5年後、10年後…と比べてみると。。(資本収益率5%、経済成長率1%と仮定して単純計算)(投資家は投資元本と利益を再投資すると仮定)
財産を築いている投資家は、資産を保有しているだけで、多額の利益を得ることができる。
それに比べて、労働者の給料は緩やかにしか上昇しない。
年数を重ねるごとに、貧富の格差は広がってしまっているわ。
ピケティ氏によると答えはイエスよ。
彼は、古代から2100年までの世界における資本収益率(r)と経済成長率(r)の比較をグラフにしているわ。その図がこちら。
資本収益率がずっと経済成長率を上回っている上、今後その格差は開いていくと想定しているの。
さらに、これからは「相続」によって益々格差が広がっていくと考えられるのよ。
先進国では少子化が進んでおり、祖父母や両親の財産を1人の子供が受け継ぐことを少なくない。生まれが裕福なだけでさらに裕福になる。
これから富を築くには
では、一般の労働者がこれから富を築くことは難しい?
お金のない家に生まれなければ、一生お金に苦労する?
いいえ、そんなことないわ。
まずはしっかり働いて、資産運用にあてる原資を作ること。
いくら貯金をして資産を増やそうとしても、なかなか増えないのが現実だからね。
お金を運用してさらなる資本の増加を目指すべきなの。
「r>g」の事実を更に実感するには
ピケティ氏が実証した「r>g」。説明されても何となく分かったけどイメージが沸かない。かと言って700ページの本を読む気力もない。と言う方は映画で学んでみては?
日本でも大きな社会問題となっている「格差社会」の真相を分かりやすく描いた、唯一無二の”学べる”映画。ピケティ自身が映画の監修・出演をこなし、世界中の著名な政治・経済学者とともに本で実証した資本主義社会の諸問題を映像で解説。
出典:21世紀の資本公式HP
あの池上彰さんも、この映画についてこうコメントしているわ。
と言うことで、私もみてきたわ。
正直に言うと「楽しい」と言える映画ではないわ。
ただ、世界経済の歴史やお金がどう動いていたかが分かる、まさに「学べる映画」だった。
そして、映像と共に過去を振り返るので、人類の歴史は凄まじいなと感じると共に、私たち人間のあり方について考えさせられる映画だったわ。
映画の中で、あるボードゲーム(人生ゲームのようなもの)を被験者にさせる実験があったの。被験者2人にゲームをしてもらう前に、コインの裏表でお金持ちと貧乏を決める。お金持ちは、サイコロが2つ回せたり、貧乏者の2倍お金が入ってきたりと格差をつける。
ゲームが進むに連れ、お金持ちの被験者は態度や声が大きくなったり、貧乏者を馬鹿にするようになっていった。
そして最後に「どうしてあなたはゲームに勝てたのですか」と言う質問に「自分の実力だ」と答えたそうなの。
でも実際は「最初のコインのお陰」でしかない。
何組も実験を行った結果、全てのお金持ちの被験者に同じ傾向がみられたそうなの。
また、富裕層は自分の資産を守ることを優先し、社会に還元していないことも指摘。タックスヘイブンがその一例ね。
これが人間の生態であり、格差が縮まらない理由なのだと。
ピケティ氏は東京大学での講演会で、このような事を言っていたわ。
親は選べませんよ。家が貧しくても、金持ちでも、何ら恥じることはない。出自に関係なく、いかに将来、世界に貢献できるかということが大切なんです。
ただ、格差によって教育の機会が阻まれてしまうのはいただけない。それが次なる格差を生むことになり、悪循環が繰り返される。民主主義なのですから、我々一人ひとりが平等な社会を目指して動き出せば変わるはずです
出典:実はみんな読み切れない トマ・ピケティ『21世紀の資本』を簡単図解 恥をかかないために
個々の力って無力と感じてしまうけど、一人ひとりが動けば世の中が変わるキッカケになる。
お金を持つと資産をもっと増やしたい、奪われたくない。と思ってしまう気持ち、分かるわ。それでも私は、ゲームの被験者の富裕層みたいな人間にはなりたくない。
少しでも格差がなくなるように、日本・世界に貢献できる人間でありたいと、この映画を通して感じたわ。
いつまで公開の映画か分からないけれど、興味のある方はぜひ見てくださいね。
最後に
裕福な人は元々稼ぎがあるから裕福?
これは記事内で話した通り、事実よね。
でも同時に彼らは裕福になる方法を知っている。
「 r > g 」のような事にいち早く気付き、資産を運用する事によって更なる資産を手にしているのだから。
「知る者と知らざる者」小さい差のようで大きな差なの。
・現代の資本主義社会では資本家が有利となっている。ピケティの15年に及ぶ調査で実証された。「 r > g 」
・労働による資産の増加より、資産を運用する事の方が効率的
・資産を運用する力をつけよう